【ネタバレ】『隔たる世界の2人』解説

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こんにちは。当ブログの2人の運営者のうちPOOLくんじゃないほう、ホラーホストのSEBAです。

 

今回はホラーホストとしてのYouTube動画で解説した作品をブログで解説したいと思います。動画で観たい方は記事最下部に貼ってある動画をご覧ください!

 

というわけで、今回は『隔たる世界の2人』を解説します。

【注意】この記事はネタバレを含みます。

『隔たる世界の2人』解説

『隔たる世界の2人』は2021年ネットフリックス配信公開のアメリカ映画。監督はトレイボン・フリーさんとマーティン・デズモンド・ローさん。

トレイボン・フリー監督

 

マーティン・デズモンド・ロー監督

 

あらすじ

ある日、黒人青年の主人公・カーターは、白人の警官から因縁をつけられ、不当に殺されてしまう。

しかし、カーターは殺された瞬間、その日の朝に時間が戻っていることに気が付き…。

BLM+タイムループもの…。すごい発想の映画ね!

 

そうなんです!

しかし、特にBLMに関心のない人には「??」な映画だと思います。なので、今回はその点を重点的に解説したいと思います。

 

BLM映画のステップアップ

ご存知のとおり、これまでにも黒人差別を描いた作品は数多く存在します。

しかし、それら作品群は時代と共に伝えるメッセージの次元が上がっているように思います。

事実を描いた作品

黒人差別映画について、古くから存在し、最も印象が強いのが「事実を描いた作品」です。

近年の作品を例に挙げると、2017年公開の『デトロイト』は、多くの目撃者や証人がいるアルジェ・モーテル事件を淡々と緻密に描いています。

被害者の人生を描く作品

しかし、事実を描くだけでは解決できない問題が浮上します。

それは「あまりにも同じような事件が多すぎて慣れてしまう」という問題です。

その点を解決するために作られた映画が2013年の『フルートベール駅で』です。

この作品はオスカー・グラント殺人事件を描いた作品です。

20歳の黒人の青年が白人警官に射殺された事件ですが、作品内で主に描かれるのは「事件まで」の話。つまり、殺されたオスカー・グラントさんがどういう人間だったのか、を緻密に描いています。

黒人が白人警官に殺される事件が起こると「よくある事件がまた起きた」と思われることが多く、また、特にオスカー・グラントは刑務所に入っていた時期があったため

可哀想だけど、殺されても仕方ないような悪人だったんだろう

と思われることも多かったようです。しかし、刑務所に入っていたからといって、何の理由もなく殺して良いわけはありません

『フルートベール駅で』は、「殺された黒人一人一人が我々と同じ人間で、家族があり、人生があった」ことを観客に意識させるために作られた映画でした。

昨年テニスの全米オープン大会に出場した際の大坂なおみ選手は、試合ごとに異なるマスクを着用し、それぞれに警官によって不当に殺害された黒人の名前が刺繍されていました。

彼女が黒人差別問題を世界に伝えようとする姿勢について、報道機関が大坂なおみ選手のスポンサー企業にコメントを求めたところ、14社中、日清食品をはじめとした13社がノーコメントでした。

なぜかというと、それらの企業は「自社の顧客は黒人差別問題に関心が無い」と思っているからです。

ここでいう「黒人差別問題に関心が無い自社の顧客」とは私たちのことです

この現状を打破するために『フルートベール駅で』は作られた訳ですね。

Keep Fightingを訴える作品

さらに、2020年のジョージ・フロイド殺人事件によってBLM運動は加速します。

世界中でデモが巻き起こるなか、残念なことにデモに乗じた暴動が多発したことも問題となりました。

また、当時の米大統領ドナルド・トランプが「暴動はANTIFAが関与している」とツイートし、さらにそれがデマであったことが判明しました

このような事件が度々起きたこと、及びそれでも白人警官が黒人を不当に殺害する事件が後を絶たないことから、BLM運動を行う側も徐々に疲弊し、時間と共に「この闘いに意味はあるのか?」「終わりはあるのか?」と思い始めました。

そこで作られたのが本作『隔たる世界の2人』というわけです。

ここからネタバレ注意です!

本作は、どうやっても殺されてしまう主人公が、それでも殺されない方法を求めてループを続ける事を決意し、幕を閉じます。

言うまでもなく、これは Black Lives Matter 運動を諦めないことを表現しています。

「え?諦めムードだったの?」

と思われるかもしれませんが、考えてみてください。

これだけ多くの事件が起き、

これだけ多くの著名人が問題提起し、

これだけ多くの作品で問題が取り扱われているにも関わらず、一向に状況が変わらないのです。

それどころか、大統領がBLM運動を「憎しみの象徴」と呼んで対立を煽るなど、問題が可視化されるにつれ、およそ好転とは言えない現状が浮き彫りになりました。

そんななかで、連日のように白人警官が黒人を不当に射殺した報道を目にすれば、諦めたくなったり、自暴自棄になったり、暴力に訴えたくなったりするのはしょうがないことです。

しかし、本作は訴えます。

'Cause it don't matter how long it takes
or how many times it takes
one way or another
I'm gettin' home to my fucking dog.

(どれだけ時間が掛かっても、何度繰り返しても、俺は絶対に──俺の犬が待つ家に帰るんだ)

科学的に正しいSFではない

本作は時間ループを扱っていう意味では「SF」ではあるものの、いわゆる「科学的に腑に落ちる」タイプのSFではありません。

最初、主人公は建物から出たことで白人警官に因縁をつけられ殺されますが、建物から出なかったとしても、又は警官から因縁をつけられなかったとしても、様々な方法で殺されてしまいます。

これは、例えば『新スタートレック』第177話のように「異なる時間軸に意識がワープさせられている」ような状態なのでしょうか?

それなら、「殺される」という未来も変えることができるはずです。

…しかし、主人公はどう行動しても、まるで辻褄が合わせられるように「殺されて」しまいます。

ここで不自然なのは、本人が「色々な方法で殺される」、つまり未来を変えることに成功しているにも関わらず、不自然に「殺される」という結果だけが変わらない点です。

単純に「警官が黒幕」なのであれば、途中の「捜査令状が発行された部屋と間違えて殺される」という場面の説明がつきません。

つまり、単純に時間が戻っているだけではなく、「主人公が殺されるように仕向けている」高次元の存在がいると思われます。

しかし、作中でそこまでの説明や示唆はされないため、科学的に腑に落ちるほどの説得力はないわけですね。

…まあ、そんなことはどうでもいいですね。

まとめ

以上が『隔たる世界の2人』の解説でした。

個人的には、スパイク・リー監督の『Da 5 Bloods』以来の傑作だと思います!

NETFLIX限定のため観にくい作品ではありますが、上映時間も30分と手軽なので、NETFLIXユーザーは是非ご覧ください。

 

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